今シーズンのW杯の特徴は、何と言っても目前に迫った北京オリンピックを抜きにしては語れない。
オリンピックの出場権獲得のシステムがこれまでと変わり、3月の世界選手権だけでなく、その前に行われるW杯のポイントも非常に重要な位置付けとなったため、国別のナショナルチームだけでなく、トレードチーム(プロチーム)も数多く出場することとなった。たくさんの強豪選手を擁する国にとっては、ナショナルチームとトレードチームに選手を振り分けることによって、より多くの選手に出場機会を与えられるとともに、オリンピックの枠取りも有利に進められるからだ。
そんな各国の思惑の中、07-08トラックW杯第1戦シドニー大会は史上最高の参加人数で開幕となった。
まず日本がポイント獲得に躍起になっている男子チームスプリントは、45秒667のタイムで11位となり、予選落ち。少なくとも順位でギリシャ、中国よりは上に行きたかったところだが、それも叶わず…。レースを終え、戻ってきてからの選手たちの表情は固く、特に第1走者の重責を担う北津留翼の表情が冴えなかった。
つい数日前のアジアカップ・マレーシアラウンドから組んだばかりの北津留、渡邉一成、永井清史の新生チームスプリント。今回優勝したチームTOSHIBAをはじめ、上位チームは44秒台を出していることを考えると、このタイムでは物足りないと言わざるを得ないが、まだまだこれからに期待したい。
男子ケイリンは伏見俊昭が出場。参加人数の多さから、予選は1着のみの勝ち上がりという厳しいものになった。まず予選第1ラウンドで3着となり、敗者復活戦へ回ったが、そこでは見事1着で第2ラウンド(1/2決勝)進出を決めた。
1/2決勝はテオ・ボスや、ロス・エドガーなど名だたる面々との対戦になり、3着までなら決勝に進めたものの、惜しくも4着。その後、7-12位決定戦に回ってここでも4着となり、伏見の最終的な順位は10位となった。
しかし今回の伏見は自らレースを作るような、積極的な競走が目立ち、特にこの難しい条件の中でこういった走りができたことは、結果以上に大きな手応えを掴めたのではないだろうか。
決勝はイギリスのクリス・ホイが勝利。ロス・エドガーが番手にいて、後ろを捌いたのもあるが、あのテオ・ボスが動けなかったくらいの強さ。世界チャンピオン、さすがの走りを見せてくれた。
男子スプリントは、予選の200mTTで北津留が10秒424で19位、渡邉が10秒555で29位と、2人とも予選落ちという結果になってしまった。今回は参加人数の多さもさることながら、タイムも非常にハイレベルで、10秒3でも予選を通過できない選手がいるような状況だった。
優勝は若手成長株のケビン・シロー(コフィディス)を下して、ミカエル・ブルガン(コフィディス)が飾った。
1kmTTには大森慶一が出場し、1分6秒135で14位。1分3秒台のベストタイムを持っている大森だけに、このタイムは目を疑うような結果だが、250mバンクにまだ慣れていなかったというのも実状としてあったようだ。
オリンピックの種目からは外れてしまった1kmTTだが、その分、以前に比べると出場選手も少なくなり、上位に食い込めるチャンスも広がったと言えるので、頑張ってもらいたい。
中長距離種目のほうでは、まず今回日本チーム唯一の女子選手、和田見里美が個人追抜き、スクラッチ、ポイントレースの3種目に出場。
個人追抜きでは3分53秒7の自己新を出すも29位と、まだまだ世界との差が歴然とあることは否めない。ポイントレースも飛び出すタイミングが図れなかったようで、14 位で予選落ち。
しかしスクラッチでは、タイミング良く飛び出し、10周近く逃げて1着で決勝進出を決める、見事な走りを見せた。決勝は14位という結果だったが、W杯初出場で十分健闘したと言えるだろう。
和田見はすでに北京オリンピックの出場権は持っているので、今後のW杯などで世界の戦いに慣れれば、かなり楽しみな選手だ。
男子ポイントレースには、飯島誠が出場。スペインの世界チャンピオン、リャネラスなどがいる予選第3ヒートを3位で通過。ベテランの冷静かつ巧みなレースを見せた。
決勝は13位という結果だったが、オリンピックも十分狙える位置にいるだけに、これからも着実なポイントの上乗せが重要だ。
男子スクラッチに出場した盛一大は、スタートと同時に飛び出し単独で逃げる展開に。集団は追わずにラップできるかに見えたが、終盤で追いつかれ、結局ラップされてしまい、予選落ちという結果になった。しかし翌日にマディソンのレースが控えていたため、勝ち上がれないと判断したところで、無理はしなかったようだ。
マディソンには飯島・盛のペアで臨んだ。日本チームとしてはW杯でマディソンに出場するのはこれが初めて。アジアの大会ではすでに経験を積み、成果も出している飯島と盛が、初体験となる世界の舞台を走った。
結果は2ポイント取るも予選10位で決勝には進めなかったが、この種目でもオリンピック出場は夢ではないだけに、これからに期待がかかる。
次のW杯第2戦の舞台は北京。プレオリンピックとなるだけに、各国・各選手がどんな戦いを見せるのか大いに注目だ。
○出場選手
伏見俊昭(JPCA・福島)
渡邉一成(JPCA・福島)
永井清史(JPCA・岐阜)
北津留翼(JPCA・福岡)
大森慶一(JPCA・北海道)
飯島誠(JPCA・チームブリヂストン・アンカー)
盛一大(愛知・愛三工業レーシングチーム)
和田見里美(鳥取・中京大学)
リザルト
●男子1kmタイムトライアル
1位 D'ALMEIDA Michaël FRA 1:02.588
2位 LI Wen,Hao CHN 1:03.575
3位 BOLIBRUKH Yevgen UKR 1:03.629
14位 大森慶一 日本 1:06.135
●男子ケイリン
1位 HOY Chris GBR
2位 EDGAR Ross SIS
3位 BOS Theo NED
10位 伏見俊昭 日本
●男子ポイントレース
1位 HENDERSON Greg NZL 31
2位 TAULER LLULL Toni ILB 27
3位 MEYER Cameron TOS 24
13位 飯島誠 日本 3
●男子チームスプリント
1位 TEAM TOSHIBA 44.639
2位 WWW.RAD-NET.DE 44.813
3位 COFIDIS 4.746
11位 日本(北津留・渡邉・永井)45.667
●男子スクラッチ
1位 KLUGE Roger FOC
2位 BELL Zachary CAN
3位 KADLEC Milan ADP
盛一大 日本 予選敗退
●男子スプリント
1位 BOURGAIN Mickaël COF
2位 SIREAU Kévin COF
3位 HOY Chris GBR
29位 渡邉一成 日本 予選敗退
19位 北津留翼 日本 予選敗退
●男子個人追抜き
1位 DYUDYA Volodymyr UKR
2位 THUAUX Phillip DPC
3位 SEROV Alexander RUS
●男子団体追抜き
1位 イギリス
2位 ニュージーランド
3位 TEAM TOSHIBA
●男子マディソン
1位 PAYS-BAS 0
2位 スペイン 10(-1)
3位 デンマーク 18(-2)
●女子スクラッチ
1位 GONZALEZ VALDIVIESO
Yumari CUB
2位 CUCINOTTA Annalisa ITA
3位 CHULKOVA Anastasiay RUS
●女子スプリント
1位 KANIS Willy NED
2位 MEARES Anna TOS
3位 TSYLINSKAYA Natallia BLR
●女子団体追抜き
1位 FEDERATIONDE RUSSIE
2位 オーストラリア
3位 ウクライナ
●女子ケイリン
1位 PENDLETON Victoria SIS
2位 REED Jennie MOM
3位 TSYLINSKAYA Natallia BLR
●女子500mタイムトライアル
1位 MEARES Anna TOS 33.869
2位 GUERRA RODRIGUEZ
Lisandra CUB 34.058
3位 KANIS Willy NED 34.141
●女子個人追抜き
1位 MACTIER Katie AUS
2位 SEREIKAITE Vilija SAF
3位 THÜRIG Karin SUI
●女子チームスプリント
1位 PAYS-BAS 33.958
2位 オーストラリア 34.759
3位 フランス
●女子ポイントレース
1位 BRONZINI Giorgia SAF 11
2位 LI Yan CHN 10
3位 MACHACOVA Jarmila CZE 9
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