このロサンゼルス大会は日本にとって、非常に大きなターニングポイントとなりそうだ。オランダのテオ・ボス、イギリスのクリス・ホイ、ロス・エドガーなど、強豪選手の一部が今大会には出場していない。各国、各選手様々な思惑があるのだろうが、このあとの第4戦、そして世界選手権を見越しての調整という意味合いもあるように伺われる。
ともかく常に上位確定といった選手たちが多少抜けた分、日本人選手が今までよりも上に食い込める可能性がぐっと高くなった。特に短距離種目はここで大きくポイントを獲得できれば、オリンピック出場へかなり近づくことになる。巡って来た千載一遇のチャンスを、日本は掴み取ることができるのか。
また今回の日本チームは第2戦まで参加していた大森慶一(1kmTT)と女子の和田見里美(ポイントレース、スクラッチ)が出場せず、男子のみ6選手で臨んだ。
初日は男子チームスプリント、男子ポイントレースが行われた。
期待された男子チームスプリントは46秒073で7位。タイムだけを見るとあまり良い数字とは言えないが、順位はこれまでの3戦の中で最高位。オランダ、イギリスが出場しなかったこともあり、ベスト(北京大会の45秒295)に近いタイムを出せればもっと上位に入れただけに惜しくもあるが、それでもポイント獲得という意味では大幅にアップし、ようやくオリンピックが見える所までたどり着いた。これには年末にタスマニアのレースに参戦するなど、少しでもポイントを取ろうと奔走したことも大きかっただろう。もちろんオリンピック出場にかなり近づいたとはいえ、世界選手権が終わるまで油断はできないが。
反対に、男子ポイントレースは非常に残念な結果になってしまった。中長距離陣を牽引するベテラン、飯島誠が落車。前を走る選手の落車に巻き込まれる形となり、肩を負傷、そのままリタイアとなった。この怪我により、予定していたマディソンの出場も取り止め、すぐに帰国することに。ここまでポイントレースだけでなく、マディソンでもオリンピックを狙える位置にいただけに、このリタイア、欠場はあまりにも痛い。しかし一番悔しく、辛いのは飯島本人だろう。「コペンハーゲンまでに必ず治す。オリンピックにも絶対に出る」と気丈に話す飯島。怪我の具合が心配だが、37歳不屈のファイターが3度目のオリンピックの切符をもぎ取ってくれることを信じたい。
2日目は男子ケイリンとスクラッチ。
男子ケイリンはこれまでの1戦、2戦同様第1ラウンドは1着のみの勝ち上がりと厳しい。第5ヒート出場の伏見俊昭の組は比較的メンバーが軽く、実力的には伏見が格上。しかし、残り1周で後方に位置し、後手に回ってしまった伏見は追い上げられず4着というまさかの結果に。敗者復活戦では残り1周で先行するも、フランソワ・ペルヴィス(フランス)に捲られ、2着。結局第2ラウンドへ進むことはできず、伏見の最終順位は13位で終わった。
今回は少なくとも第2ラウンドへ進出することは最低条件であり、実際、実力通りの走りをすれば第1ラウンドの1位通過は十分あり得ただけに、かなり悔いの残る結果となってしまった。伏見本人も落胆の色を隠せないが、このあたりが簡単に力だけでは量れない「ケイリン」競技の難しさとも言えるのだろう。
男子スクラッチ予選に出場した盛一大は、8着までが決勝に進める中、あと一歩及ばず9位。疲れや、足の調子が思わしくなかったこともあったようで、本来のスピードのある走りができず、W杯リーダージャージ選手のマークという作戦に出たものの、この選手も積極的なレースをせず、惜しくも盛は予選敗退となった。
優勝は日本でもお馴染みのワンカンポー(ホンコンチャイナ)。チャンピオンとなった世界選と同じ勝ち方で、残り4周くらいまで後方で脚を溜め、少し緩んだところをカマシスパートという作戦だった。
最終日はマディソンが不参加になったため、日本選手の出場は男子スプリントのみとなった。
まず男子スプリント予選200mTTでは、渡邉一成が5位、北津留翼が13位で予選通過、1/8ファイナルへ進出を決めた。続く1/8ファイナルでは、北津留がフランスのボジェと、渡邉がチームTOSHIBAのベイリーと対戦。渡邉は非常に僅差の勝負となり惜しかったが、北津留ともども敗戦。次の1/4ファイナルBでは渡邉と北津留の日本人対戦となり、ここは渡邉が勝利し、1/2ファイナルBへ。北津留は敗退。
1/2ファイナルBでコフィディスのディディエ・アンリエットと対戦した渡邉は先着するも、「スプリンターレーンに入った」ことを理由に降格を告げられ、もったいない形で勝ち上がりを逃してしまった。
それでも一つでも順位を上げるべく、11位-12位決定戦でチームTOSHIBAのショーン・ケリーと対戦した渡邉は、逃げるケリーを追い込んで差し、勝利。最終順位を11位とした。
スプリントで優勝を飾ったのは、以前国際競輪にも参加していたロベルト・キアッパ(イタリア)。W杯スプリント総合チャンピオンのミカエル・ブルガン(フランス)、そして勢いのある新鋭ケビン・シロー(フランス)を退けての見事な勝利だった。
このロサンゼルス大会の結果によって、日本は今まで暗雲が立ち込めていたチームスプリントに一躍GOサインが。しかし一転して、これまでランキング上位にいたケイリン、ポイントレースと、そして善戦していたマディソンに黄色信号が灯る状況となってしまった。
1ヶ月後に控えたW杯最終戦となる、コペンハーゲン大会。日本チームはどう戦うのか。目が離せない大会となりそうだ。
○出場選手
伏見俊昭(JPCA・福島)
渡邉一成(JPCA・福島)
永井清史(JPCA・岐阜)
北津留翼(JPCA・福岡)
飯島誠(JPCA・チームブリヂストン・アンカー)
盛一大(愛知・愛三工業レーシングチーム)
リザルト
●男子1kmタイムトライアル
1位 SUNDERLAND Scott TOS 1:02.702
2位 BOLIBRUKH Yevgen UKR
1:03.110
3位 LI Wen,Hao CHN 1:04.013
●男子ケイリン
1位 TOURNANT Arnaud COF
2位 VOLIKAKIS Christos GRE
3位 BAYLEY Ryan TOS
13位 伏見俊昭 日本
●男子ポイントレース
1位 MEYER Cameron AUS 23
2位 RATAJCZYK Rafal POL 20
3位 NEWTON Chris RCY 15
飯島誠 日本 DNF
●男子チームスプリント
1位 コフィディス 44.490
2位 フランス 44.833
3位 オーストラリア 45.244
7位 日本(北津留・渡邉・永井)46秒073
●男子スクラッチ
1位 WONG KamPo HKG
2位 KIRYIENKA Vasili BLR
3位 STROETINGA Wim NED
盛一大 日本 予選敗退
●男子スプリント
1位 CHIAPPA Roberto ITA
2位 SIREAU Kévin COF
3位 MULDER Teun NED
11位 渡邉一成 日本
14位 北津留翼 日本 予選敗退
●男子個人追抜き
1位 PHINNEY Taylor TSL 4:26.093
2位 HUIZENGA Jenning NED 4:28.241
3位 ESCOBAR ROURE Sergi ESP 4:34.495
●男子団体追抜き
1位 オーストラリア 4:06.171
2位 デンマーク 4:09.378
3位 ウクライナ 4:05.770
●男子マディソン
1位 ベルギー 8
2位 デンマーク 18(-1)
3位 ドイツ 12(-1)
●女子スクラッチ
1位 BECKER Charlotte GER
2位 ROMANYUTA Evgeniya RUS
3位 TCHALYKH Elena RUS
●女子スプリント
1位 TSYLINSKAYA Natallia BLR
2位 REED Jennie MOM
3位 KANIS Willy NED
●女子団体追抜き
1位 ウクライナ 3:27.438
2位 ロシア 3:30.018
3位 アメリカ 3:31.453
●女子ケイリン
1位 REED Jennie MOM
2位 KANIS Willy NED
3位 GONG Jinjie GPC
●女子500mタイムトライアル
1位 GUERRA RODRIGUEZ
Lisandra CUB 33.955
2位 KANIS Willy NED 34.486
3位 KRUPECKAITE Simona 34.764
●女子個人追抜き
1位 KALITOVSKA Lesya UKR 3:39.917
2位 CALLE WILLIAMS Maria
Luisa COL 3:41.904
3位 HAMMER Sarah OPC
3:38.001
●女子チームスプリント
1位 オランダ 34.027
2位 フランス 34.773
3位 オーストラリア 34.788
●女子ポイントレース
1位 MACHACOVA Jarmila CZE 27
2位 LEE Min Hye KOR 23
3位 LI Yan CHN 12
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